先日、アラガンのWEBセミナーに参加しました。
テーマはボトックスで、九州で活躍する美容外科医の西田美穂先生がご自身の診療のご経験などを講演されました。
印象的だったのが「眉間のボトックスをすると、口角が上がる」という観察。
ある男性の症例で気がついたそうですが、そのお一人だけではなく、先生曰く「みんな」そうなっているとのことです。
眉間に注入したボトックスが遠く離れた口角で作用したとは非常に考えにく、その先生の考察では、眉間と口角の筋肉が「協調」して動いていて、その一方の動きが制限されるともう一方も動かしにくくなるのではないかということでした。
確かにそうなのかもしれないです。
眉を寄せるのも、口角を下げるのも、どちらも不機嫌だったり悲しかったり、ネガティブな感情の際の表情筋の動きですから、同じ感情の変化に応じて関連する筋肉が一斉に動くようなメカニズムがあるというのは実に納得のいく説明です。
でも、私が上記の発表を聞いて思い浮かんだのは、全く別のことでした。
「フェイシャルフィードバック仮説」です。
フェイシャルフィードバック仮説(facial feedback hypothesis)とは、一言で言えば
「表情の変化は、感情が表出した単なる「結果」ではなくて、表情の変化が逆に感情の変化の直接の「原因」となる」
というものです。
禅問答のようで分かりにくいかもしれないです、ごめんなさい。
感情の変化 → 神経を介して筋肉にシグナルを送る → 表情筋の動き(表情の変化)
表情筋の動き → 神経を介して脳にシグナルを送る → 感情の変化
こういう両方向の神経伝達があって、感情の変化が表情の変化を介して増幅したり軽減したりするのだという仮説です。
こうした仮説を最初に著書で唱えたのは、「進化論」で有名なダーウィンです。
例えば、怒っているときに感情のままに怒りを表に出していると、怒りはますます強くなる。逆にクールを装っていると、怒りの感情までもが和らぐ。
確かにそうかもしれない。
でも、感情に身を任せて怒るにしても、逆にクールを装うにしても、自分自身、表情筋の動きをコントロールしているのか、それとも感情をコントロールしているのか、本当のところはなかなか分からないですよね。
それで、長らく「仮説」のままで研究のしようも無かったのだと思いますが、その状況を変えたのがボトックスです。
ボトックスを使えば(理論上感情の変化とは関係なく)表情筋の動きをコントロールできますから、「表情筋の動き」が原因となって「感情が変化」するかどうか確かめることができます。
そして、実際に、ボトックス注射によって眉間の動きを制限すると、ネガティブな感情が抑制される・・・具体的には「鬱(うつ)」の症状が改善することが示されていて、うつ病の治療法の一つとして注目されているのです。
(精神科領域全体の中での注目度の大きさは知りません、念のため)
眉間のボトックス治療をすることでネガティブな感情が抑制されるのならば、ネガティブな感情によって起きる他の表情変化も当然抑制されるはずで、下がりがちだった口角が上がるのは実に自然なことと考えられます。
もちろん、西田先生の考察を否定するわけでは全くなく、どちらもありそうだなあと思うのです。
新型コロナの影響で気持ちもふさぎがちな世の中。
一方で、笑いは免疫力をUPするという説もありますし、そして免疫力のUPはコロナに対抗する一助になりそうですし、できるだけ明るい気持ちで生活したいなあと思います。
「笑いで免疫力UP」に一番効果が高そうなのはテレビのお笑い番組ですが! 眉間や口角にボトックスを打つのも良いかもしれません。
少なくとも、見た目の印象が良くなって、周りの人を明るい気持ちにできるかもしれないですよね。